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矢倉3七銀戦法;現在の主流① [矢倉▲3七銀]

周辺だの、是非だのと随分前置きが長かったと思われるかもしれないし、主流といいつつもやがては過去のものとなるのだろうが、あえてこう書きたい領域にまで来たことは確か。

ここまで見てきたとおり、後手に専守専制の構えを採られた場合、先手も攻め切るのは難しかった。そこで再三ほのめかしてきた、穴熊含みの指し方の登場となる。

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矢倉にも穴熊の概念が。近代的。

図では後手は8五歩型だが、当然に9五歩型も考えられるところ。こちらもいずれ見ることとなる。

▲9八香と上がった局面、後手が漫然と△9五歩▲9九玉△4二銀などと進めてしまうと、以下▲8八銀△6四角▲7七金寄△7三桂▲2五桂(53手目図)と組まてしまう。

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玉が遠く、先手が勝ちやすい局面と思われる。

そこで▲9八香に対し後手は①△6四角と②△4二銀の2手段が有力。この2つは一見、大きな違いはない(直近の効果は▲8八銀に対し△8六歩を用意)ように見えるからだ。だが、これから見ていくとわかるとおり、真の狙いは異なる。具体的に述べるなら①△6四角は攻め合い、②4二銀は受けに重点を置いている。今回は①の△6四角を見ていく。

△6四角からに対して初志貫徹とばかりに▲9九玉と入り、以下△7三桂▲2五桂△4二銀▲3五歩(51手目図)と攻める順もあるが、後手の桂が前に進出している分、先手が損をしているという。後の変化と比較るることによりわかるのだが。

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これも考えられる変化ながら、後の変化に比して先手損。

また、先の手順中、△7三桂には▲2五歩△1三銀▲5七銀△4二銀▲4六歩(53手目図)と、これまでにも出てきた▲2五歩の変化もあるようだが、これも形勢としては難しいものの、△7三桂のところで△4二銀とする選択権が後手にあり、やはり先手が少し損をしているという(ということは、△7三桂に対しては有力ということか?)。

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たびたび出てきた▲2五歩。ちなみにこの後はどう進めるのだろうか・・・

▲2五歩の変化はこの後がさすがに難しそうだ。現在は△6四角に対してはすぐに▲6五歩と突くのが一般的となっている。▲6五歩には△7三角の一手(48手目図)。①△6四角は▲6五歩と突かれ手損するように見えて、後の△6四歩の反撃を見てもいる。②△4二銀との大きな違いがここにある。

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何気ない駆引きの応酬。

△7三角の局面、先手も分岐点。▲6五歩と突いた以上▲2五桂と攻めるか、▲9八香と上がった以上▲9九玉か。先ずは▲9九玉と入る手から。▲9九玉に対し△4二銀と固める手は後で見る変化に合流する。そこでここでは▲9九玉に対し△6四歩と突く変化を見る。△6四歩には▲1五歩△同歩▲3五歩△同歩▲6四歩△同角▲2五桂(57手目図)。

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△6四歩に▲同歩ではなく、角筋が止まった瞬間と捕らえ攻める順が参考になる。 

▲2五桂まで進んで、後手の(有効度合いから見た意味での)指し手が難しい。例えば△7三桂が考えられるが、これには▲1二歩△同香▲3五銀△同銀▲1三歩(63手目図)の攻めがある。

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 1歩渡すことにより攻めを誘発。

この順は6五の歩が先手の持ち駒となる為、後手としても選択権はあれど指しにくい変化と思われる。ただ、先手もこの順を選ぶなら、▲9九玉のところで▲2五桂とすれば、対する後手も△4二銀くらいなので、そこで▲9九玉としたほうが無難ではあるらしい。

というわけで△7三角の局面に戻り、前述の▲2五桂を選択。▲2五桂△4二銀▲3五歩(ここで▲9九玉なら前述の変化か)△同銀▲同銀△同歩▲1五歩△同歩▲6四歩(57手目図)と進んで手目図。

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▲6四歩。なんとも悩ましい歩突き。

前述の▲9九玉に変えて▲3五歩と攻める変化。対する△3五同銀が強い手。ここ△3五同歩は▲5五歩△同歩▲1五歩△同歩▲3五銀△同銀▲同角(図略)とさばいて先手有望。そして手筋の▲6四歩。後手はどちらで取るか悩ましい。先ずは△6四同角と取る手から。△6四同角▲3五飛△2四歩▲1二歩△同香▲1五香△同香▲1三桂成△同桂▲1四歩△1二歩▲1五飛△3三銀(70手目図)と進んで難解な形成。

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手順を尽くして攻めるも難解。

手順中、△2四歩のところ△2四銀と手堅く受ける手には▲6五飛△7三桂▲6六飛で先手指せる。70手目図以下▲1三歩成△同歩▲3五桂△4二金引▲2五歩で攻めが続くか微妙。

次に57手目図▲6四歩を△同歩と取る変化。△6四同歩以下▲3五角△3四歩▲6八角△6五歩▲1三歩△1四銀▲1二銀と進んで65手目図。

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△1四銀、▲1二銀は知らなければ指せないであろう、所謂「定跡」手順。

△6四同歩には▲3五角と角で取る。以下端の攻防となるが▲1二銀とはなんとも露骨な手。65手目図以下△1二同香▲同歩成△同玉▲1七香打△2二玉▲1五香△2五銀▲同歩△8六歩▲同銀△6六桂▲7九金△4五歩▲1二香成△3三玉▲5五歩(81手目図)と進んでやや先手持ちの形勢か。

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やや先手持ち。▲6四歩に対しては△同角~△2四歩が最強の応手ということになろうか。

57手目図の▲6四歩に対しては△同角、△同歩どちらも有力だが、以上より△6四同角と取ったほうが難しいようだ。いずれにしても簡単ではない。以上で①6四角の変化を終わる。

 

(参考文献;将棋世界誌2010年12月号)


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