矢倉3七銀戦法;現在の主流②(その1) [矢倉▲3七銀]
前の記事の続き。▲9八香に対する②の△4二銀を見てみよう。
専守専制。開戦のタイミングは果たしてどこから・・・
図以下▲9九玉△6四角と進んで48手目図。
46手目△4二銀における基本図とも言える局面。
前の記事でも触れたが、▲9九玉の次にすんなり▲8八銀を許しては作戦負けになる。前記事とは△6四角と上がるタイミングが一手違うだけなのだが、ここから全く異なるコースを歩むこととなる。
今回記事の△4二銀の変化は、もし拘るのなら先手も強引に穴熊に組むことが出来る。結果としては穴熊に拘り過ぎるのは現実的ではないのだが、膨大な変化の序章として、今回はその順を見ることにする48手目図△6四角以下▲2五歩△1三銀▲5八飛△5二飛▲8八銀△3三銀▲7七金寄(55手目図)まで進んで穴熊が完成。
強引(?)に穴熊完成。
上記手順にて後手の8筋交換を許すことなく穴熊完成。ただ、先手も▲2五歩を突いてしまうなど、陣形面の犠牲が全く無いわけではない。この▲2五歩についてはこれまでも見てきたとおり無い手ではないのだが、桂の進路を自ら断っており、よほど力と条件が整わない限り指し辛い手ではある。かといって▲2五歩のところ単に▲5八飛と回るのは△3三桂▲5五歩△4五歩▲同桂△同桂▲同銀△5五歩▲6五歩△7三角▲2五歩△3三銀引(60手目図)といった展開か。
互角ではあるが・・・
この変化は互角かもしれないが△6九銀の傷が気になるのと、後手玉も堅くまとまっていることもあり、個人的には選びたくない順である。というわけで、あくまでも穴熊を目指す、という方針を貫くなら上記▲2五歩はやむなしか。戻って55手目図の▲7七金寄以下の順を追う。後手の次の一手によって面白い順が見られる。▲7七金寄以下△7三桂▲5七飛△1二香▲6七飛△1一玉▲6五歩△3一角▲3五歩△同歩▲同銀と進んで65手目図。
▲5七飛~▲6七飛が柔軟な(?)発想。
△7三桂に対しては5七飛~▲6七飛が面白い手順。動きはぎこちないが、柔軟な発想による手順と思う。そして▲3五歩からの攻めの決行。これまでにも出てきた▲2五歩型でのお馴染みの攻め(というか攻めるならこれしかない)が、相変わらず△3六歩の筋が気になる。しかし図で△3六歩なら▲3四歩△同金▲同銀△同銀▲1五歩△同歩▲1三角成と激しく攻めて際どいながらも先手指せそうだ。が、しかし・・・
▲7七金寄の局面に戻って△7三角▲5七角△8四角(58手目図)と進むと難解。
優劣不明ながら打開が難しい。
実は△7三角と先に引かれると難しいようだ。対して先に▲6五歩と突くのは△8四角と出られる。角交換は△2七角の筋があるため避けたい。打開が難しく、千日手の可能性もある図である。
強引に穴熊を目指す変化もこれまで同様、後手に正しく対応されるとうまくいかない。ただ、後手が正しい対応を知らなければうまくいく変化があちこちに潜んでいるところが面白く、また怖いところでもある。
次回は△4二銀以降の、所謂「本線」とされる変化を見ていく。
(参考文献;将棋世界誌2010年12月号)
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