▲5八飛を振り返る⑦ [矢倉▲3七銀]
いよいよ△5四歩の決戦(50手目図)へ。
決戦。じっとしていては▲2五桂~▲3五歩と動かれる。
矢倉3七銀戦法に於ける▲5八飛型の現時点での結論へ向かう。
尚、これまで見てきたように、ここでも後手陣が8五歩型か9四歩型かによってこの後の展開が異なってくる。結論から言うと9四歩型のほうが勝るようだが、歴史を追う意味でもまずは8五歩型から見ていきたい。
△5四歩に対し、実戦例は9筋の突き合いが入っている形で▲1五歩△同歩▲5四歩△同銀▲5五歩△同銀▲同銀(59手目図)と進んでいる。ここで後手分岐点。
ここで後手、△同角か、△同飛か。
△5五同飛と取るのは以下▲5五同飛△同角▲3一銀で王手角取りの筋があって後手拙い。そこで実戦は△5五同角と取り、▲4六銀△5四歩▲5五銀(63手目図)と進展。
何気にここも後手の分岐点。
63手目図まで進んで後手も単に△5五同歩か△6九銀を入れるか迷うところ。尚、手順中、△5四歩のところ△7三角とするのは▲5一飛成△同角▲7一飛(65手目図)で後手悪い。
これでは悪いため、後手も角銀交換の駒損に甘んじるしかない。
63手目図に戻って、後手△6九銀は指したい手だが、▲2八飛△7八銀成▲同玉△5五歩▲8四角△3一飛▲6二角成(71手目図)と進んで先手が指しやすくなったという。
銀を渡したため、先手の攻めが強力になってしまった。
従って後手は△6九銀の誘惑には乗らず、単に△5五同歩と取り、▲2八飛に△1六歩(66手目図)と応じるほうが勝る。
後手、徹底して受けにまわる。
尚、ここではじめて触れるが、1筋の突き捨ては難しいところ。突き捨てていなければこの△1六歩も生じないのだが、先手歩切れであり、どこかで歩を補充するためにも突いておかないと後では手抜きされる恐れもある。△1六歩以下は▲6二角△3一飛▲8四角成△1七歩成▲5八飛△6九銀▲5五飛△7八銀成▲同玉△5四歩▲8五飛△9三桂▲6五飛△6四銀(図略)のように進めば後手が面白いが、9筋の突き合いがなければ途中の△9三桂がなく、先手も面白いかもしれない。この変化は何気に重要で、もし後手陣が8五歩型でなく9四歩型であれば先程の△9三桂が実現することとなり、後手も戦えるということになる。
66手目図はタイトル戦でも出現(平成9年王座戦;羽生-島両先生)、その将棋は以下▲2四角△同歩▲2五歩(71手目図)と攻めている。
先手が攻めきれるかどうか、という局面だろうか。
実戦は71手目図以下△2五同歩▲5二銀△4二金引▲2五桂△2四歩▲4四角成△2三玉▲3五歩△同歩▲1二歩△同香▲1三歩(83手目図)以下先手が勝っている。
きわどい攻防。この将棋は先手が勝っている。
上記△2五同歩では強く△1七歩成とし、▲2四歩△2八と▲1一香成△2三歩(76手目図)と進めたほうがよかったのでは、というのが深浦先生談。
入玉含みに指す。先手も忙しい。
また、深浦先生によれば66手目図で▲8四角(9筋の突き合いがなければ▲9五角)の可能性も示唆しておられる。途中の▲8五飛の変化も含め、ここでも9四歩型のほうが勝るとの見方から、これまで何度も述べてきた通り、▲5八飛に対し後手は9四歩型で待機するようになる。
(参考文献)
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