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▲5八飛を振り返る② [矢倉▲3七銀]

先の記事では▲5八飛とまわった手に対する△4五歩の反発は芳しくない結果に終わった。

今回は5筋交換を許す指し方。先手の狙いが5筋交換を見せての▲3八飛という一手得であるなら、5筋を切らせてしまおうという思想であろうか。

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あっさりと5筋交換を許す△8五歩。他に△9四歩。

△8五歩に▲5五歩△同歩▲同銀と進んで45手目図。

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ここは後手の分岐点。

▲5五同銀の局面は後手の分岐点なのだが、ここでは△5四歩とあくまでも穏やかに指す手に絞って見ていく。周知の通りこの△5四歩は現在指されることはないため、ここからはレトロな定跡らしきものを辿ることとなる。

△5四歩以下▲4六銀△9四歩▲3八飛△4二銀▲1八香△9五歩と進んで52手目図。

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後手、専守専制の構え。

後手にここまで徹底的に受けにまわられると先手も簡単には攻めきれない。十分な攻撃態勢が必要である。尚、△9五歩のところ△3三桂と更に用心するのは非常に堅いのだが、▲9六歩(53手目図)と突かれ、後手は指し手に窮する恐れがある。それはそれで1局だろうけども。

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後手手詰まりの恐れ。先手は機を見て▲5五歩~▲3五歩と攻める。

尚、▲4六銀に対し△4二銀と守りを固める手順を見ているが、この△4二銀のところ△6四銀と出るのは以下▲3八飛△7五歩▲同歩△同銀▲7六歩△6四銀に▲3五歩△同歩▲1五歩△同歩▲2五桂(図略)と総攻撃をかける形となって先手十分。

戻って△9五歩に▲2五桂と跳ねて53手目図。ここで▲2五桂としなければ今度こそ△3三桂とされ、今度は先手が指し手に窮する。

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先手の攻め、後手の受け。

53手目図の▲2五桂まで進めることができれば先手の▲5八飛はひとまず成功したということになろう。4二銀と引いているため後手玉は堅いが、5筋の歩が切れていることと▲4四銀~▲7一角の筋があって後手からは△4五歩のような手出しが出来ない状態に陥っている。53手目図以下△6四角▲6五歩△7三角▲5五歩△同歩▲3五歩△同歩▲1五歩△同歩▲3五銀△同銀▲同角(65手目図)。

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先手成功とは言え、後手玉も堅くまだ難しい、というのが個人的所感。

後手が△6四角と更に待った変化。参考までに初歩的手順を示した、というような感じだが、一般的には先手成功といわれている順が実現しており、勝敗は別として後手面白くはない展開だろう。ただ、ここから△3四歩▲6八角△2四銀とさらに徹底して受けられた場合、これを攻略するのが容易でないのも事実ではあるが。

△6四角ではまだしも△3三桂(54手目図)か。

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△9五歩型から玉を固める。そして例の手順ともいうべき△3三桂。

△3三桂(桂交換~△9四桂の狙い)は他のテーマでも出た攻め筋。△3三桂以下▲同桂成△同銀上▲2五桂△9四桂▲3三桂成△同銀▲6五銀と進んで61手目図。

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まだ△9四桂は脅威ではない。

この時点では△9四桂はまだ脅威ではない。そこで▲6五銀とゆっくり攻める感じで先手十分。

先回観たとおり、▲5八飛に対する△4五歩がうまくいかないため△8五歩と伸ばしてみたが、これも芳しくない結果に。

冒頭に戻る。細かいところだが同じ待つにしても△8五歩では△9四歩(42手目図)の方が有力。

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△8五歩と△9四歩。一手の違いがこの後の展開を大きく変える。

△9四歩以下▲5五歩△同歩▲同銀△5四歩▲4六銀△9五歩▲3八飛△9三桂▲1八香△8五桂と進んで52手目図。

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足の速い桂を活用。少なくともこれで一方的にはならない。

桂の活用、これが△8五歩と△9四歩の決定的な違い。△9七桂成と端を食い破る手もあり、△8五歩以下の変化のように一方的に先手に好形を許す展開にはならない。△8五桂以下▲8六銀△4二銀▲7五歩と進んで55手目図。

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先手の指し方も難しいところ。

△4二銀と固められ、7三角の利きも通っている状態であり、先手の指し方も難しい。そのような事情で▲7五歩と角頭に着目。△同歩には▲同銀として次に▲7四歩から▲8六歩を狙うわけだが、後手にも△7七歩や△9七桂成があって簡単とは思えない。

▲5八飛に対しては△9四歩の手待ちが有力ではあるようだ。以上で後手が5筋交換を許し、穏やかに△5四歩と受ける変化を終わる。

 

(参考文献①)

羽生の頭脳3 最強矢倉 (将棋連盟文庫)

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  • 出版社/メーカー: 毎日コミュニケーションズ
  • 発売日: 2010/06/18
  • メディア: 文庫

 

 

(参考文献②)

これが最前線だ!―最新定跡完全ガイド (最強将棋塾)

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  • 作者: 深浦 康市
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 1999/04
  • メディア: 単行本

 

(参考文献③)

将棋世界誌2010年9月号

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