SSブログ

矢倉3七銀戦法;現在の主流を齧る [矢倉▲3七銀]

いよいよこれまで主流の周辺として、図から▲1六歩~▲2六歩と突く、所謂「加藤流」を見てきた。嘗て私が矢倉の詳しい定跡を齧った当時はこの加藤流こそが最新の定跡であったはずなのだが、時は流れ、いつの間にか図からいきなり▲4六銀と出る手が再び主流となっていたのである。

BANT001.jpg

加藤流▲1六歩の時代はいつの間にか終わっていた。

32手目図から▲4六銀(33手目図)とすぐに出るのが現在の主流。

BANT002.jpg

ある手の発見がこの▲4六銀を復活させたのかも。

今回は▲4六銀に対し直ちに△4五歩(34手目図)と突く変化を見ていく。

BANT003.jpg

▲4六銀に対する△4五歩。一目指したくなる手なのだが・・・

△4五歩には▲3七銀△5三銀と進むところ。このあと先手は▲4八飛と4筋にまわる手とすぐに▲4六歩と突き返す手が考えられる。
先ずは▲4八飛(37手目図)から(▲4六歩は後述)。

BANT004.jpg

4筋が争点に。

△4五歩を突いた瞬間は先手の銀を後退させ気持ちいいのだが、直後にこの歩を目標にされる。ここからは4筋の攻防である。図以下△4四銀右▲4六歩△同歩▲同角と進んで41手目図。

BANT005.jpg

本格的に駒がぶつかる。後手はどう応じるか。

図では△4六同角と△5五歩の2通りの応手が考えられるが、△5五歩と突くのは以下▲4五歩△同銀▲5五角△同角▲同歩△4六歩▲同銀△同銀▲同飛△2八角▲3七角(53手目図)と強く応戦して先手が指せるようだ。

BANT006.jpg

強く戦って先手よしか。

図で△3九角成には▲5四歩の味がよい。また、△3七同角成▲同桂△2八角には▲4三飛成△同金▲2五桂と激しく戦って先手がいいとされている(相当強くなければ指せない順とは思うが)。

また上図に至る手順中、△5五同角のところ△4四銀と上がる手も有力。以下▲4五飛と取れば△5五角▲同飛△同銀▲同歩△4九飛▲3八銀△6九飛成▲6八金引△5九龍▲4八銀打△5五龍▲4六角△同龍▲同銀△2八角▲3七銀引△1九角成▲6一飛(下図)という進展になるのだろうか。

BANT001.jpg

右翼の銀が気になる。

また、上記△4四銀に対し、▲6四角△同歩▲6三角の順も指されている。以下、微妙に形は異なるが(端と△8五歩-△2二玉等の交換有)△4六歩(▲7四角成なら△4七歩成~△3八角)や△4七歩▲同飛△8六歩▲同銀(▲同歩△4六歩▲同銀△同銀▲同飛△2八角▲4八飛△3九角成▲4四飛△同金▲7四角成△2二玉▲6四馬-下図-なら難解ながら先手指せていた)△4六歩▲4八飛△5三金▲7四角成△4七歩成▲同飛△3八角といった例もあり、こちらの順は意外に有力ではないかと感じる。

BANT002.jpg

強く戦う。こうしてみると▲4六同角には△5五歩も有力ではないか?

とはいえ戻って41手目、▲4六同角に対し後手は△4六同角と応じるのが普通と見られているようだ。以下▲4六同銀△4七歩▲3八飛△4九角▲2八飛△4八歩成▲同飛△2七角成▲4五歩△5三銀と進んで52手目図。

BANT007.jpg

ここで今は亡き、村山先生の新手が出る。

52手目図。当初はここで①▲5八角や②▲4七角だった。具体的には①▲5八角以下△3五歩▲3七銀△3六歩▲同角△4七歩▲同角△4五馬▲2五角△3四銀▲3六銀△4四馬▲同飛△同銀▲1六角(67手目図)。

BANT008.jpg

これは先手よし。但し3一玉‐8五歩型の場合は後手よしなので注意。

この順は先手よし。なので後手は序盤の△2二玉で先に△8五歩を優先(図で△8六歩の突き捨てが利く)した時代があった。また、②▲4七角以下は△2六馬▲3七銀△1五馬▲1六歩△2四馬▲1五歩△4二銀引▲3八角△3三馬(62手目図)のような展開。

BANT009.jpg

なんとも堅い後手陣。こちらは後手よしだろう(3一玉-8五歩型で実戦例有)。

だが、▲5八角をも▲4七角をもさらに上回る手が出た。53手目図の▲5七金である。

BANT010.jpg

決定打か。これが▲4六銀復活の原動力ではないかと思う。

▲5七金に対し後手はどう応じてもよくはならないようだ。△3六馬と歩を取るのが自然だが、▲4七金と寄られ、△同馬▲同飛△3六金なら▲4九飛△4八歩▲3九飛△4六金▲2八角△5七銀▲7九角(65手目図)となって後手は収拾がつかない。

BANT011.jpg

後手失敗。△5七銀のところ△3五銀も▲3六歩で終了。

65手目図があまりに酷いので、▲4七金に対しては△1四馬と逃げるのだろうが、以下▲1六歩△2四歩▲3七桂、または直ちに▲3七桂と自然に進められると後手の馬が窮屈で、これも先手よしか。ちなみに直ちに▲3七桂と跳ねた実戦(但し、8五歩‐3一玉型)として、△4二銀左▲5五歩△同歩(△2四馬なら▲5四歩△同金▲5五歩△6四金▲4四歩)▲同銀△5二飛▲6一角△5一飛▲7二角成△6四銀▲4四歩△3三金寄▲4五桂(▲6四銀は△5九飛成▲6三馬△4六歩で負け)△5五飛▲3三桂成△同桂▲6三馬△5三銀引▲5四歩(75手目図)△4四銀▲4一金△2二玉▲6四馬△3一銀打▲4三歩△同金▲5五馬△同銀▲8二飛と進んだ例がある。

BANT003.jpg

実戦例より。▲5四歩が急所の叩き。△同銀には▲4一金~▲6四馬がある。 

というわけで△4五歩~△5三銀に▲4八飛と回って先手十分指せる(▲4六同角に△5五歩の変化は気にはなるが)のだが、もうひとつ、すぐに▲4六歩と突く手も見る。▲4六歩以下△同歩▲同角△8五歩と進んで40手目図。

BANT012.jpg

▲4八飛を省略。直ちに開戦。

図の△8五歩で△4六同角▲同銀△6九角は▲3七銀△4七角成▲6八金寄(45手目図)と馬の捕獲を狙われる。

BANT013.jpg

これはこれで難解な戦いだが、打った角をすぐに取られるのは面白くないだろう。

また、△4六同角▲同銀に△4七角も▲3七銀△6九角成▲6八金引△5九馬▲6七角△6四銀▲4八銀(49手目図)と馬を殺される。

BANT014.jpg

こちらも失敗。というわけで後手は角を交換せず△8五歩と伸ばした。

後手から角交換して先手陣に打ち込む順はうまくいかないため後手は△8五歩と伸ばしたのだが、ここから先手が動く。△8五歩以下▲6四角△同歩▲4一角△7五歩と進んで44手目図。

BANT015.jpg

先手の角は有効。

後手の銀は5三にいるため、先手の角は殺されることはない。手順中、▲6四角に△同銀は▲7一角の筋がある。図の△7五歩は▲同歩なら△6五歩▲同歩△3九角の狙い。△7五歩以下▲7四角成△7六歩▲同銀△5五歩▲同歩△9二角▲6三馬△4七角成▲7四歩(53手目図)と進んで先手よし。

BANT016.jpg

こうなれば先手よし。

これは先手うまくいき過ぎと思うが、終始先手の指しやすい流れであることは間違いないようだ。▲4六銀に対する△4五歩は、銀を後退させる気持ちよさはあるものの、結果として争点を与える分、損ではないかと思われる。

 

参考文献1
将棋世界2010年4月号

参考文献2

最強矢倉・後手急戦と3七銀戦法 (羽生の頭脳)

最強矢倉・後手急戦と3七銀戦法 (羽生の頭脳)

  • 作者: 羽生 善治
  • 出版社/メーカー: 将棋連盟
  • 発売日: 1993/01
  • メディア: 単行本

参考文献3

康光流現代矢倉〈1〉先手3七銀戦法 (パーフェクトシリーズ)

康光流現代矢倉〈1〉先手3七銀戦法 (パーフェクトシリーズ)

  • 作者: 佐藤 康光
  • 出版社/メーカー: 日本将棋連盟
  • 発売日: 1997/04
  • メディア: 単行本

 


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。