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矢倉3七銀戦法;主流の周辺⑥ [矢倉▲3七銀]

⑥まで来た(いつまで続くやら)。今回は▲1七香・▲1八香に続く第3の手段、▲3八飛(図)を見ていく。

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▲1七香・▲1八香と比べ、形を決めすぎない分、最も融通が利くように思える。

さて、このあとの展開は・・・

▲3八飛に対しては△2四銀(下図)、△9五歩(後述)が考えられる。先ずは△2四銀から。

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▲4六銀~▲3七桂に対する常套手段、△2四銀。

今回の▲3八飛の変化は先回までの▲1八(七)香の変化と似ている部分も多く、この香上がりの一手を指した時点でこれまで見てきた変化に合流してしまうので、ここではこれら香を上がる変化は採り上げない。△2四銀以下▲4六銀△4五歩▲3七銀△4四銀▲4八飛△3三桂▲9六歩△7三角と進んで48手目図。

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ここでも右香を上がると合流する。従って動く。

ここで角筋を避けて▲1八(七)香と上がる手が第一感だが、それは先回までの変化に合流する。先手は香上がりを省略した工夫を生かすべく、ここから▲4六歩と動く。以下△4六同歩▲同銀△4五歩▲3七銀△5二飛▲4六歩△同歩▲同角△同角▲同銀△4七歩と進んで60手目図。

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これまでは無理とされてきた△4七歩だが・・・

この▲4六歩△同歩▲同銀と一歩を手にする指し方は名人戦でも現れた指し方。ただ、ここで△5二飛と中央から動く手を見せられては先手も再度▲4五歩△同歩▲同角と動かざるを得ない。そうなると直前に歩交換した手が一手パスということになり、先回までの▲1八(七)香との優劣論となる。尚、▲4六同角に対し、△5五歩と突くのは▲2五歩△同桂▲4五歩△3三銀▲5五歩で先手が指せる。これは先回の▲1八香の変化と同じ。そして角交換後の△4七歩。これまでと違い、今回はこれが煩い手となっている。即ち、先回までは▲4七同飛△3八角▲4八飛△2九角成▲4五歩△5三銀▲3五歩で先手がやれるということだったが、今回は先手の右香の位置が1九なので、直後に△1九馬と取られてしまう手があり、先手よしとは言えない。そこで△4七歩には▲2八飛とかわす。対して△3九角が厳しく映るが、▲1八飛△4八歩成▲5七角(下図)の用意がある。

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△3九角では後手よくならない。

△3九角では後手よくならない。従って後手は▲2八飛に△4八角とこちらに打つ。整理すると60手目図△4七歩▲2八飛に△4八角である。以下▲5七角△同角成▲同金△4八角▲3七桂△3九角成▲1八飛と進んで69手目図。

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後手、馬作りに成功。途中の▲5七角の意味は・・・

後手は馬作りに成功したものの歩切れであり、優劣は難しい。図で△4八歩成なら▲4五歩△5三銀▲2五歩△同桂▲同桂△同銀▲4四桂が一例で、こう進んだときに先手の金が5七にいるため後手は△4七とと引くことが出来ない。この△4七とを未然に防いだのが▲5七角の意味である。

後手、△4八歩成でよくならないのは辛い。図以下△8二飛▲4七金△2九馬▲4八飛△1九馬▲4五歩△5三銀▲3五歩△同歩▲7一角△7二飛▲5三角成△同金▲3四歩と進んで83手目図。

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駒損ながら攻めが切れない形に。先手成功。

△4八歩成が芳しくない後手は先程の▲4四桂等の当たりを事前に避けて△8二飛と戻すくらいか。先手は▲4七金と歩を払う。後手は△2九馬以下、歩切れながら香得してよさそうだが、先手の▲3五歩が継続手。83手目まで進んで研究範囲というのも凄いが、ここまで来ると先手の攻めが一歩先んじており、かつ切れる心配もなさそうである。これは先手よしだろう。先手は右香を1九に残し且つ取らせることで攻めの主導権を得るという、恐ろしく高度な戦術を用いていることに驚く。

▲3八飛に対する△2四銀はそれほど芳しくなかった。そこで第2の手段、△9五歩(下図)へ。

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第2の手段、△9五歩。▲1八香のときもこれが有力だった。

これまでの変化を見て、先手の▲9六歩が大きな一手であることがわかる。そこでここでもこの手を消して端を詰める△9五歩が有力。以下▲1七桂△2四銀▲2五桂△7三桂▲1八香と進んで45手目図。

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ここでも△4二銀と引けば先回の▲1八香の変化に合流する。

△9五歩と突かれ、先手も攻撃態勢をとる。▲4六銀とは上がらずに▲1七桂~▲2五桂が速い展開。▲3八飛と寄った手を生かし、余計な変化をなくしている。そして最終手の▲1八香。ここでも後手が次に△4二銀と引けば、▲4六銀△4五歩▲同銀△2五銀▲同歩△5三桂・・・という前記事で紹介した、▲1八香以下の変化に合流することになる。

では、合流しない更なる手が後手にあるかどうかだが、ここで△3三桂(46手目図)とぶつける強手がある。

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新たな強手、△3三桂。狙いは前記事同様、桂を手にしての逆襲。

△4二銀と引く手が自然のようだが、結果難解であったことは前記事で見た通り。後手の新たな強手△3三桂に対し、先手は▲4六銀と駒を働かせる手が見えるが、△2五桂▲同歩△同銀▲3五歩(51手目図)の瞬間が甘く、指しにくいとされている。

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この瞬間が甘い。

そこで先手は△3三桂には▲3三同桂成と交換に応じ、△同銀(△同金は後述)▲2五桂△2四銀▲4六銀と進んで51手目図。

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先手、ここからどう攻めを継続するか。それとも・・・

桂交換後、じっと▲4六銀と出る。尚、この▲4六銀のところで▲3五歩と突くのは、△同銀▲1三桂成△3一玉▲1四歩9四桂(56手目図)となって後手も充分戦える変化であるようだ。

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△3五同銀が冷静な応手か。後手も戦える。

とういうわけで、△2四銀には▲4六銀と上がって次の攻めに期待するわけだが、この瞬間が甘い。ここから後手が動く。51手目図の▲4六銀以下△8六桂▲同歩△同歩▲同銀△同角▲同角△同飛▲8七歩△8五飛▲3五歩△6九角▲3四歩△4七角成(64手目図)まで進み、先手自信のない形勢。

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△6九角から△4七角成の反撃が厳しい。

▲4六銀の瞬間、後手は△8六桂以下急迫。△4七角成となっては先手容易ではない。

戻って、▲3三同桂成の桂交換に△3三同金と取る手も有力。以下▲2五桂には△同銀▲同歩△8六桂▲同歩△同歩▲同銀△9四桂▲8七歩△8六桂▲同歩△同角▲同角△同飛▲8七銀△8二飛(64手目図)となって、先手は歩切れで苦しい。これも後手が指しやすそうだ。

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先手、歩切れが痛い。これも後手が指しやすいだろう。

やはり桂交換後の△8六桂。特に△9四桂以下歩切れにされてはさすがに先手苦しい。

というわけで、最有力と見られた▲3八飛だが、これまで見てきたように△9五歩~△3三桂と応じられるとなかなかうまくいかないようだ。

以上をもって主流の周辺、それも主流に最も近いと思われるところを終わる。

(参考文献;将棋世界2010年3月号)


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