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矢倉3七銀戦法;主流の周辺④ [矢倉▲3七銀]

ちょっと真面目にやりだすと意外と止まらない。気づいてみると既に④である。

これまでは後手が△7三銀と攻勢をとったが、ここでは△5三銀(図)と守勢にまわる。

BANT001.jpg

先手の攻め、後手の受け。

実戦もこの△5三銀が多いように思う。これに対する先手の比較的初期の指し方を見ていく。

比較的初期の指し方と書いたが、それは現在指されていない指し方ということである。即ち、ここで比較的初期の順を見るという行為により現在の最新定跡が確立されるに至る膨大な変化の探求と軌跡を辿る。

図は早くも分岐点。今回採り上げる▲1七香の他、▲3八飛や▲1八香が考えられ、どれも同じような順を辿りつつ微妙な違いが形勢を左右するという驚異の世界である。尚、図で▲9六歩と受けるのは、以下△7三角▲3八飛△6四銀▲4六銀△7五歩▲同歩△同銀▲7六歩△8四銀(図略;先手の手順は一例)で端を狙われて悪いのは周知の定跡。

図より角筋を避ける▲1七香(39手目図)。今回はこれを。

BANT002.jpg

最近あまり見られなくなった▲1七香。ではなぜ▲1七香なのか(だったのか)。

▲1七香の狙いは後手の角筋を避けつつ▲2五歩~▲1八飛~▲2六銀とし、▲1四歩△同歩▲同香△同香▲1五歩と端を攻めることである。一例としては▲1七香以下△9五歩(△7三角が正解)▲2五歩△7三角▲1八飛△6四歩▲2六銀△8四角▲1四歩△同歩▲同香△同香▲1五歩(51手目図)。

BANT003.jpg

これが▲1七香の狙い。

この順で先手が優勢というわけではないが、先手が主導権を握っていることは間違いなさそうであり、これが▲1七香と角筋を避けながら上がったことの狙いでもある。この順を避けるべく、△7三角のところ△5五歩と動いてくるのは①▲同歩△同角▲1八飛△5四銀▲3五歩△同歩▲4六銀△7三角▲3五銀△3四歩▲2六銀でも、②▲5八飛△5六歩▲同金でも先手よし。

BANT004.jpg

①の変化。やはり端が厳しい。

BANT005.jpg

②の変化。中央から反撃。

△5五歩はよさそうに見えるが逆用される。①は図から次の▲1四歩△同歩▲1三歩△同香▲1五歩△同歩▲同銀の攻めが速い。②は図以下△7二飛▲6五金△8二角▲4六銀△4五歩▲5五銀の要領である。

というわけでこのように端を狙うことが出来るなら▲1七香でいいではないかということになるが、上記手順中、実は後手に緩手があった。上述している通り、△9五歩では△7三角(40手目図)が正しい。

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△8四角~(△6四歩~)△6五歩の形を急ぐ。

この△7三角に対して同様に端を狙う形に進めるのは、以下▲2五歩△6四歩▲1八飛△8四角▲2六銀に△6五歩と一手早く突かれ、▲同歩には△3九角成(図略)で先手失敗。従って先手は端攻めを諦め(、▲1七香の価値がここで減ずることとな)る。

△7三角に対し先手は▲3八飛(41手目図)。第2の手段である。

BANT007.jpg

1筋から3筋に狙いを変える。第2の手段。

図以下△2四銀▲4六銀△4五歩▲3七銀△4四銀▲4八飛△3三桂▲9六歩△5二飛▲4六歩△同歩▲同角△5五歩と進んで54手目図。

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有名な定跡。図を挿入するまでもなかったか。但し、▲9六歩の間合いは心得たい。

後手は△3三桂と跳ねて徹底防戦。これで4筋は堅いが、反面、2四の銀が取り残されるという考え方もある。従って△3三桂のところ△3三銀左とする手もあるがその順は後手よくならない(後述)。また、最終手△5五歩のところ△4六同角▲同銀△4七歩も筋だが、あっさり▲同飛と取られ、△3八角▲4八飛△2九角成▲4五歩△5三銀▲3五歩(63手目図)と進められると次の▲6一角が厳しく先手が指せる展開である。

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この場合、△4六同角~△4七歩はうまくいかない。

54手目図以下▲2五歩△同桂▲4五歩△3三銀▲5五角△同角▲同歩と進んで61手目図。

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手順中、▲5五角のところ▲5五歩は△4四歩と合わせられて難しくなる。

これも有名な定跡手順ながら、△3三銀右のところ△4五同銀と取るのは①▲2四角△同歩▲4五飛の2枚換えや②▲5五角△同角▲4五飛、③▲5五角△同角▲同歩△4四歩▲4六銀△同銀▲同飛△5五飛▲5六歩△5一飛▲6二角、という2通りの順があり、どちらも先手がいいようだ。また、本手順中、▲5五角のところ▲5五歩と取ってしまうと△4四歩と合わせられ、以下▲同歩△同銀▲2六銀△1七桂不成▲同桂△4五香(66手目図)で後手よしとなる。

BANT011.jpg

これも有名な図か。

後述するとした、△3三銀左の変化と、何も触れなかったが△4五歩に対する▲3七銀のところで▲4五同銀と取る手も見ておく。まず△3三銀左の変化であるが、これは▲4六歩△同歩▲同銀△4五歩▲同銀△同銀▲同飛△5八銀▲4八飛△6七銀成▲同金△1九角成▲4六角△同馬▲同飛△6四角▲4八飛△1九角成に▲6一角(▲4一銀△4二金寄▲5二銀打も有力)で先手指せる。

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後手は歩切れが痛い。

また、▲4五同銀の変化も侮れない。▲4五同銀以下、△3三桂▲3四銀△同金▲3五歩△4四金▲3四歩△4二銀▲3三歩成△同銀上(△同銀引は▲2五桂)▲3六桂△4三金引▲2四桂△同歩▲2五歩△同歩▲2四歩△3四歩(図)と正しく応じられると息切れする。

BANT019.jpg 

意外に煩い。正しく応じられなければ攻めきれるということか・・・

戻って61手目図。ここで後手の手が広い。まず、△3七桂成▲同桂△5九角(図)はどうか。

BANT012.jpg

第一感この筋か。

先ずは見える筋。しかしながら、以下▲3八飛△4七銀▲4四桂△同金▲同歩△3八銀成▲4三金(手目図)と攻め合って先手が優勢となる。

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△3七桂成~△5九角は後手芳しくない。

では、△5五同飛▲5六歩△3七桂成▲同桂△5四飛(図)と軽く指すのはどうか。

BANT014.jpg

▲4四桂も手順に消してうまそうだが・・・

だがこれも後手よくならない。△5四飛以下▲5五桂△4二金引▲6五角△5三歩▲4四歩と反撃して先手が指せる。

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桂を渡すと▲5五桂の反撃が厳しい。では桂を渡さなければ?

上述の順でも△3七桂成を入れなかったらどうかという課題はあれど、61手目図での後手の最善手は△4七歩(62手目図)のようである。

BANT016.jpg

今度はこの歩が成立。

△4七歩以下▲6八飛△5五飛▲5六歩△4五飛▲7二角△3七桂成▲同桂△4六飛と進んで70手目図。

BANT017.jpg

ここまでが最新の定跡。後手よし。

以上、39手目に▲1七香と上がっただけで膨大な変化が生じたが、これらは定跡及びその周辺の変化の一例に過ぎない。今回の▲1七香は

・後手が早めに△7三角と引くことで端攻めを牽制されてしまう
・△2五同桂の形が香にあたるデメリットがある

という二つの理由から主流ではなくなっているようだ。

 

(参考文献①)

・将棋世界2010年1月号

(参考文献②)

最強矢倉・森下システム (羽生の頭脳)

最強矢倉・森下システム (羽生の頭脳)

  • 作者: 羽生 善治
  • 出版社/メーカー: 将棋連盟
  • 発売日: 1993/05
  • メディア: 単行本

(本書の副題は森下システムとあるが、前半、前巻の3七銀戦法の延長となっている)

(参考文献③)

康光流現代矢倉〈1〉先手3七銀戦法 (パーフェクトシリーズ)

康光流現代矢倉〈1〉先手3七銀戦法 (パーフェクトシリーズ)

  • 作者: 佐藤 康光
  • 出版社/メーカー: 日本将棋連盟
  • 発売日: 1997/04
  • メディア: 単行本

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