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矢倉3七銀戦法;主流の周辺② [矢倉▲3七銀]

先の記事で触れた△7五歩▲同歩に△4五歩(下図)、これを観てみたい。

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後手の工夫。

△4五歩に対しては▲3七銀と引くのが本手とされているが、7筋交換に対する常套手段の▲6五歩も指してみたいところ。以下△5三角▲7五歩△同角▲5七銀(43手目図)と進めば左翼での盛り上がりが期待できるからである。

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左翼だけ見れば理想形だが・・・

通常であればこのあと▲6六銀右から▲4六角の筋だが、既に△4五歩が突いてあるのでそうはならない。図以下△7四銀▲6六銀右△8四角▲5九角△7三桂▲3七角△8一飛と進んで50手目図。

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途中、▲5九角の一手がつらい。

後手は△8一飛と角筋を避け、次の△6五銀を可能にする。図以下▲7五歩△6五銀▲同銀△同桂▲6六銀△7七歩▲同桂△同桂成▲同金直(59手目図)が一例で、形勢は互角か。だが、後手の攻め駒を捌かせているので先手としてあまり好んで選択する変化ではないように思う。

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厚みを保つも、後手も捌けた形。

というわけで、△7五歩に対し▲6五歩の誘惑に乗るのは得策ではない。△4五歩には▲3七銀と引き、△7五角に▲7六歩(43手目図)。

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この▲7六歩が平凡な最善手といわれている。

おとなしく▲3七銀と引き、平凡に▲7六歩。これに対しては△6四角と△5三角が考えられる(△8四角は緩い。▲3五歩と先攻して先手よし。)が、羽生先生の著書によると△5三角が最善としてあるので先ずはそちらから。△5三角に対しては先手にも①▲4六歩②▲2五歩③▲1七桂という有力手がある。

先ず①の▲4六歩には△同歩▲同銀△4五歩▲3七銀△7四銀▲4八飛△6四歩▲4五飛△6五歩(54手目図)と4筋を放置して攻め合いに来られ先手芳しくないとされる。

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後手先攻。6筋を突くのが△5三角の狙い。

以下▲4七飛△8六歩▲同歩△7三桂で後手全軍躍動。これはさすがに先手面白くない。

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後手全軍躍動。先手は歩得くらいでは割に合わない。

次に②の▲2五歩。これは有力とされている。対して△6四歩と先に突く手には▲2六銀と出る。以下△6五歩▲同歩△8六歩▲同歩△7四銀のような攻め合いなら▲2四歩△同銀▲1五銀△同銀▲同歩(57手目図)と先に捌いてしまう。

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先に銀を捌いて先手まずまずか。

▲2五歩に対しては△6四角の味を残して先に△7四銀もある。以下▲4六歩△同歩▲同角△6四歩▲2六銀△4五歩▲3七角△7三桂▲1七桂△4二角▲2九飛(57手目図)と進んでいい勝負か。

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▲2五歩は有力。

尚、手順中△4二角は▲2四歩△同銀▲5五歩△同歩▲同角△3三銀▲3五歩の筋を警戒した手、とのことだが、どのように警戒し、この手の効果が現れているのかよくわからない。いずれにせよ、△5三角に対する▲2五歩が有力であることは確かなようだ。

だが、もっと簡明な手、③の▲1七桂がある。対して後手は△6四角(46手目図)。

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明快な▲1七桂△6四角に対する応手もいくつか考えられる。

尚、この△6四角のところ△7四銀も勿論ある手。以下▲2五桂△2四銀▲4六歩△6四角▲4八飛△7三桂▲4七飛が一例(図略)で、これはこれで一局だろう。△6四角に対しては▲4六歩△7四銀▲2五桂△4四銀▲1五歩△2四歩▲1三桂成△同玉▲1四歩△2三玉(56手目図)が一例。

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ここから攻めを繋げられるかどうか。

もうひとつの例として、△6四角に▲5五歩と突く手もある。以下△7四銀▲2五桂△4四銀▲1五歩(51手目図)という感じで先程と同様、端を狙う。

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角の利きが2四から1三に通っていて、直感的にはこちらを選択したい。

▲4六歩も▲5五歩もどちらも難しく、一局の将棋だろう。以上で△5三角を終わる。

▲7六歩に対しては実際は△6四角(44手目図)のほうが実戦例は多いようだ。羽生先生の著書出版から15年以上経過、結論も変わったのであろうか。

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現在はこの△6四角のほうが多いという。

この△6四角には▲1七桂とは出来ない。▲2五歩がスタンダードな応手であるようだ。以下単純に△7四銀と出る手に対しては▲4六歩△同歩▲同角△4四歩▲3五歩△同歩▲6四角△同歩▲4五歩△同歩▲7一角△4二飛▲3五角成(59手目図)が先手の狙い筋となる。

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先手の狙い筋を具現化した図。

これはこれで難しいのだろうが、馬を作って先手が指しやすいのは間違いないだろう。尚、手順中、▲4六歩に△4四金ともたれて来るのは▲4八飛△4二飛▲4五歩△同金▲4六歩△4四金▲2六銀(55手目図)として次に▲3七桂から▲4五歩の押し戻しを狙う。

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4筋での押し合い。

対して△4三金引▲3七桂△4四歩の先受けには▲5五歩△同角▲4五歩△同歩▲2四歩△同銀▲4五桂(65手目図)と強く攻める。

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香当たりになっているが次の▲2五歩が受けにくい。

図となっては完全に右辺での戦いとなっており、7四の銀が取り残されてしまった格好である。仮に△1九角成と香を取ったとしても銀が遊んでいるのは痛い。これは先手持ちだろう。

▲2五歩に△7四銀ではうまくいかなかった後手、△9四歩と一手待つのはどうか。

対して先手は▲4六歩△同歩▲同銀(49手目図)と動く。

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△4五歩か、△7四銀か・・・難解な局面。

ここで△4五歩と打つのは▲3七銀と引かれ、△7四銀▲4八飛△4四金▲4六歩となり、上述の変化にほぼ合流(△9四歩の一手が入っている所だけが異なる)する。そこで単に△7四銀と上がり、▲3七桂△7三桂と攻撃態勢の理想形を築く。このまま先攻されてはまずいので先手は▲5五歩(53手目図)と仕掛ける。

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先攻。後手に先攻されてはまずい意味も。だが△7三桂で△4五歩▲同桂△4二銀なら・・・?

△8六歩の先攻を許してはさすがにまずい。先手は一手早く▲5五歩と仕掛ける。以下△5五同歩▲3五歩△同歩▲4五桂△3四銀▲2四歩△同歩▲同飛△2三歩▲2九飛△4四歩▲3三歩△同桂▲同桂成△同金直▲2六桂(69手目図)が一例。

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緩まず攻め続ける。ちなみに△5五同歩は必要なのだろうか。

69手目図まで進めば先手成功か。一例なのでこうはならないだろうけども。以下△2五銀には▲3四歩△同銀▲同桂△同金直▲3五銀。ただ、直後の後手からの反撃も脅威ではある。

ハイレヴェルな戦いになるとやはり先手と後手、一手の差が非常に大きいようだ。▲2五歩に対し△6二銀(46手目図)と引く手も指されている。

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初見では奇異な一手。これまでの経緯により攻め合いは一手遅いと見た。

△6二銀以下▲4六歩△同歩▲同角△同角▲同銀△4五歩▲3七銀△5三銀▲7五歩と進んで55手目図。

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今度は左辺から。

角交換してすっきりした感じだが、先手は7筋に手を求める。以下△5五歩▲同歩△4四銀右▲5四歩△同金▲7四歩△6四金▲2四歩△同歩▲2五歩△同歩▲2四歩と進んで67手目図。

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▲7一角の筋。尚、最初の▲2四歩に△同銀は▲7一角△4二飛▲5二歩の実戦例有。

やはり先手からは▲7一角の筋を絡めた筋が残っていた。7筋の突き出しから金を呼び出し、一転、2筋で歩を使っての手作りが秀逸。ただ、これで決まるわけでもないのだが。尚、最初の▲2四歩の突き出しに対し△同銀と取る手に対しては、▲7一角△4二飛▲5二歩と進めた実戦例がある。また、図の最終手▲2四歩のところ▲1七桂も指してみたい手だが、それは3七の銀が浮くので△7六歩▲同銀△7五歩(72手目図)の反撃が厳しくなる。

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▲6五銀には△同金▲同歩△5五角。ここでの▲1七桂は成立しない。

この△7六歩~△7五歩の筋は常に警戒が必要。▲2四歩と垂らした67手目図からもこの反撃がある。67手目図以下△7六歩▲同銀(▲6八銀と引くのは利かされと判断)△7五歩に平凡に▲6五銀と逃げると、以下△同金▲同歩△8六歩▲同歩△2四銀(78手目図)で難解となる。

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67手目図同様、△2四同銀には▲7三歩成△同桂▲5一角で決まっていると思いきや・・・

ここまで来ると変化の一例でしかないのだが、78手目図で▲7三歩成△同桂▲5一角と進めると△5五角(82手目図)と王手で桂に繋がれる。

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単に王手をかわすのは△3三銀右。▲6六金打も△同角▲同金△8六飛の筋があり簡単ではない。

▲2四歩(67手目図)と垂らしたあたりでは先手が調子よく手を繋いでいるようだが、△7六歩の反撃も厳しい。上図が芳しくないと△7五歩に対する▲6五銀のところ▲7三歩成△同桂▲5一角と攻め合い、△7六歩▲7三角成(77手目図)△8一飛と進んだ実戦もある。

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△7六歩~△7五歩の反動もきつい。矢倉ならではの激しい展開。

かなり深い部分まで行ってしまったが、先後ぎりぎりのところで均衡が保たれており、簡単ではない。

戻って、△4六同角のところ△5三銀(下図)も考えられるところ。

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△5三銀。寧ろこちらが本手か?

△5三銀以下▲7五歩△4四歩▲7四歩△4六角▲同銀△6四銀▲3五歩(57手目図)と進んだのが2007年の森内‐郷田両先生による名人戦。

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名人戦に現れた変化。

当然ながらこれも難しい戦い。平手だけにそう簡単に結論が出るはずもない。

 

(参考文献1)

将棋世界2009年12月号

(参考文献2)

最強矢倉・後手急戦と3七銀戦法 (羽生の頭脳)

最強矢倉・後手急戦と3七銀戦法 (羽生の頭脳)

  • 作者: 羽生 善治
  • 出版社/メーカー: 将棋連盟
  • 発売日: 1993/01
  • メディア: 単行本

 

 

(参考文献3)

康光流現代矢倉〈1〉先手3七銀戦法 (パーフェクトシリーズ)

康光流現代矢倉〈1〉先手3七銀戦法

  • 作者: 佐藤 康光
  • 出版社/メーカー: 日本将棋連盟
  • 発売日: 1997/04
  • メディア: 単行本

 


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