懲りずに踏み込む [ひねり飛車]
2010年10月24日。社団戦リーグ最終日。
思えば本年は(昨年もだが)本当にラッキーなきっかけで出場させていただいたのだった。本当に最後の対局となる可能性高き一戦の相手は、本年リーグ無敗のチームであった。
私が先手である。横歩取り模様の局面から私が横歩を取らず飛を引き、ひねり飛車模様に。そして先回同様、▲3六飛(33手目図)。
もっと早い段階で▲3六飛と指していれば後手も3四の歩を守ったのだろうが、さすがにここまで進んではそう甘い結果にはならなかった。先日の将棋同様、後手は歩を守らず△4四角(34手目図)。やはり▲3四飛には△7四歩(▲同歩なら△7六歩以下の桂頭攻めがある。
▲3四飛には△7四歩以下の逆襲を秘めた△4四角。
だが、▲3六飛と指した以上、この手を無駄にする気にはなれない(なったほうがよかったと思う)。
そして俺は行った。▲3四飛(35手目図)!
▲3六飛の一手を無駄にしたくはなかった。
後手は予想通り△7四歩と突いてきた。予想通りというか当然の一手である。対して▲7四同歩と取るのは前述の通り△7六歩で悪い。△7四歩以下▲9七角△9五歩▲7四歩△6三銀▲2四歩△同歩▲2三歩△7六歩と進んで44手目図。
遂に△7六歩が入った。
遂に△7六歩に手が回った。その間、私も歩を駆使して後手陣に仕掛けをめぐらせる。だが、現実の駒損は痛く、この局面既に自信はなかった(正しく言えば▲3四飛を後悔していた)。44手目図以下▲7三歩成△同桂▲7四歩△同銀▲6四角△7二金▲4四飛△同歩▲5六角と進んで53手目図。
後手の次の一手が問題だった。
一手緩めば△7七歩成と桂を取られる。飛を切り、5六に角を放つ。だが、全く成算はなかった。というのも図で△6三金と上がられたら次の手がわからなかった(というか投了?)からである。
だが、後手の応手は△6三金ではなく、△6三銀であった。53手目図以下△6三銀▲7三角成△同金▲6五桂△7二金▲3四桂と進んで59手目図。
桂が生還。また、急所の▲3四桂が入った。
後手の応手は△6三金ではなく、△6三銀だった。確かにこの方が陣形も引き締まっているが、本譜の通り▲7三角成から▲6五桂と勝負する順を与えてしまった。結果として後手の△9五歩・△7六歩の2手が空振りに。5六の角も急所に利いており、こうなっては駒損ながらも寧ろ模様がよくなったと感じた。後手も相当気分的には嫌なものがあっただろう。だが、こちらは1歩だけの持ち駒。攻めが続くかどうか心許ない状態が続くが、緩んだ時点で負けである。
だがそれは後手も同じだった。59手目図以下△8五飛▲7四歩と進んで61手目図。
今となってはこの2手が勝負を分けたように思う。
△8五飛。この手自体は次の飛成を見て厳しい。▲8七歩と飛成を受けると歩切れとなってこちらの攻めも切れそうである。後手の狙いもそこにあっただろう。そう進んでは相手の思い通りになると思った私はここでも勝負手を放つ。飛成を恐れず▲7四歩(図)の垂らしである。
61手目図以下△8九飛成▲7九金△9九龍▲7三歩成△9八飛▲6三とと進んで67手目図。
この手が詰めろになるのを後手はうっかりしたらしい。
△8九飛成には▲7九金と応戦。▲7三歩成となって取られるはずだった先手の左桂が大活躍する展開に。そして△9八飛は厳しい一手だが、ここで▲6三と(図)が銀を補充しながらの詰めろ。△7九飛成の余裕がない。感想戦でわかったのだが、後手はこの▲6三と(が詰めろとなるの)をうっかりしていたらしい(▲6三とではなく▲7二とと金の方を取られると思っていた)のだ。対局中はまだ自信がなかったが(実は私も本当は▲7二とと金のほうを取りたかった)、この当たりの読みの応酬も私の方に幸いしたようだ。
67手目図以下△6三同金▲2二歩成△同金▲同桂成△4一玉▲3四角△4三香▲8八銀と進んで75手目図。
この受けが間に合う。飛を取れば速い。
随分前に垂らした2三の歩、3四の桂、そして5六の角が働いた。▲6三とと先手で銀を補充できたため、▲2二桂成に△同玉と取れないのが後手としては痛かった。さらに▲3四角で香車も使わせ、散々利かしてから▲8八銀の受け。完全に逆転したと思った。
75手目図以下△8八同飛成▲同金△同龍▲3二金△5二玉▲4二金△6二玉▲5二飛△7一玉▲7二銀△8二玉▲6三銀不成△9三玉▲7九金と進んで89手目図。
再度受ける。
やはり飛が入ると攻めの威力とリーチが違う。ここでも散々利かした上で▲7九金の受け。あとは入玉さえされなければ勝ちである。
89手目図以下△8六龍▲7三桂成△9四玉▲8二飛成△同龍▲同成桂△7三金▲4三角成△8五銀▲7一飛△9三香▲7三飛成(101手目図)と進んで後手投了。
投了図。どうにか最終局も勝利。
本年は出だしでつまずいた以外、不振な成績は個人戦に集中したのでチームの皆様にご迷惑をおかけすることなく終わることが出来たのではないかと思う(実際、私が負けた時はチームは負けておらず、それ以外私個人としては全勝だったようだ)。チームの皆様、本年も本当にお世話になりました。
と言ってしまえば聞こえ(見え)がいいが、本局を題材にするなら、団体戦であることを考えれば、本来はこの将棋は▲3四飛を自重すべきだったのではないか、という反省もある。▲3六飛という一手の顔を立てるためだけに勝負を顧みず踏み込むという行為はチームの一員として、さらには社会人としてどうであったか、という思いもないわけではない。
結果として勝つことは出来たものの、この将棋は途中述べたとおり、本来は完封負けしていてもおかしくない内容であった。
盤上に於ける手の選択は常に最善を求めることであり、その最善の積み重ねによる勝利こそが本来の勝ちであることを思うと本局は単に運がよかっただけという、多方面において課題の多い将棋であることを忘れないようにしたい。
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