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矢倉3七銀戦法;現在の主流②(その8) [矢倉▲3七銀]

△3五同銀の局面。

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平凡な▲3五同角だとどうなるか。

先回はここで▲1二歩という捻った順を見たが、今回は普通に▲3五同角と取り返す順を。

図以下▲3五同角△3四歩▲7九角△2五桂▲同歩と進んで手目図。

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後手分岐点。

常識的な手の応酬を経て65手目図。先手には次に▲1四歩の狙いがある。例えば△3三銀なら▲1四歩△2六桂▲2八飛△1八桂成▲同飛(下図)として先手十分。

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▲1四歩が入って先手よし。

後手もゆっくりとしてはいられない。貴重な手番をどのように活かすか。△8六歩はどうか。対して▲8六同銀と取るのは玉が薄くなるので先手も指しにくい。とはいえ、以下△5六歩▲1三歩くらいで優劣不明のようだが。△8六歩に対しては▲同歩が普通と思われるが以下△6九銀▲8八金△8七歩▲同金△9五桂▲9六銀△5六歩▲1二歩△同香▲1三歩△同香▲1四歩△同香▲2六桂(下図)と進んでやや先手持ちのようだ。

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やや先手持ちと思われる局面。

△8六歩以下の反撃は厳しいように見えて決定打とはならなかった。では△5六歩(下図)はどうか。

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名人戦で指された一手。

△5六歩は一般的に「拡張高い」と表現されそうな雰囲気を持った一手。 つい先日の名人戦第6局でも指されており、まさしく最先端の領域に入った感じである。一見手渡しのように見えるが、次の△5五桂が厳しい。▲1四歩なら今度は△2六桂で飛の処置に困ることとなる。先手もゆっくりしてはいられない。そこで△5六歩には▲1五香が決断の一手。以下△同香▲1四桂△1二玉▲1三歩△2一玉と進んで72手目図。

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攻め切れるか。

手順中、△1二玉のところ△3三玉と逃げるのは▲1三角成△5三銀(△4五歩は▲5六金で先手やよしとされる)▲4一銀(下図)として先手僅かによさそうである。

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△3三玉は後手芳しくない。

72手目図に戻り、▲4六角△1一歩▲7三角成△同桂▲4一角△5二銀▲2二銀△同金▲同桂成△同玉▲3二金△1三玉(下図)と難しい進行が続く。

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難解な戦い。

図以下は▲4二金△4一銀▲4三金が一例だが、攻めが繋がるかぎりぎりの局面。尚、上述の名人戦第6局では▲4六角のところ▲2四歩と指し、以下△同歩▲同角△2三銀▲1二歩成(下図)と進んでいる。結果は先手が勝ったものの、▲2四歩自体最善手だったかどうかはわからない。

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名人戦第6局の進行。以下△同銀▲1五角。

66手目に△5六歩と突く手は先手に攻めさせて受け切り勝ちを狙う指し方だろうか。この手で△3五桂(下図)も考えられる。こちらのほうが先手の飛角の利きを同時に止めており、(善悪は別として)第一感と思う。尚、上の△5六歩の変化と前後するが、先日の名人戦第4局で指されたのがこの△3五桂であった。こちらもまた最先端の世界である。

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もう一つの手段、△3五桂。

このまま押さえ込まれてはいけないので先手は動かなければならないのだが、これが非常に難しい。▲7五歩△5六歩▲1二歩△同香▲6四歩△同角▲5六金△5七歩▲1四歩(下図)と左辺に戦線拡大するのは有力で、優劣不明とされている。

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戦線拡大。有力だが金が離れるので指しにくいのも事実。

手順中、▲6四歩に対し△8六歩▲同歩△4七桂成は▲3六飛△5七歩成▲同金△同成桂▲同角△3五銀▲6六飛△8七歩▲3六歩(下図)で先手指せる。

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先手の飛角が意外に軽い。しかし8七の歩も相当嫌味。

△3五桂に対しては上記左辺への戦線拡大も有力ながら、▲1四歩(67手目図)が最も指されているようだ。

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後手玉にプレッシャーをかける。△同香には勿論▲2六桂。

▲1四歩と垂らされ、今度は後手が分岐点。桂をどちらに成るかだが、△4七成桂なら▲3六飛△3五銀▲6六飛△1四香▲2六桂△3三玉▲1四桂△4五歩▲7五歩(下図)といった展開となり、これは先手やや指せるようだ。先程から頻繁に出ているが、▲6六飛と廻った形が好形で、攻めが続く。

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△4七桂成は失敗か?。

上記名人戦第4局も△4七桂成だった。以下▲3六飛△3五銀▲6六飛△8四角▲7五歩△同角▲7六飛△4八角成▲7四飛△7三歩▲7六飛△5三銀▲2七桂△2六銀▲1五桂△1七歩▲1三銀(下図)と進み先手が勝っているが、図直前の△1七歩が疑問手で△3五歩ならまだ難解だったという。

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△1七歩で△3五歩なら・・・というわけで△4七桂成も有力。

戻って△2七桂成はどうか。以下▲5八飛△6九銀▲6八飛△7八銀成▲同飛△3三銀▲1五香△1二歩(下図)が考えられる。

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進行の一例。この図をどう捉えるか。

あくまで一例に過ぎないとはいえ、オーソドックスに進めると辿り着くことになりそうなこの76手目図をどう考えるか。ここに至る前に様々な変化が試みられているが、現時点ではプロ間でも結論は出ていないようだ。プロレヴェルならいざ知らず、結論の出ていないこの局面を想定して指し進めるのはいかがなものか、というのが私の感想である。おそらくこの思いは私だけではなく他の人も持っているはずで、この難しさがアマチュア間で矢倉があまり指されていない理由であろう。

参考文献1.将棋世界誌2011年4月号

参考文献2.将棋年鑑平成23年度版


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