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矢倉3七銀戦法;現在の主流②(その5) [矢倉▲3七銀]

△3三桂の強手に対し▲5五歩では軽過ぎ、▲3三同桂成と素直に交換に応じるのも後手の狙いにはまった。先手困ったようだが、ここで▲1五歩(53手目図)と突くのが定跡となっている。

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端から。3三の桂にはさわらない。

さすがにこの▲1五歩は手抜きできない。△1五同歩に▲3五歩(55手目図)と続ける。

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1筋~3筋の順に仕掛けるのが定跡。後手の応手は2通りあるが・・・

55手目図で後手は分岐点を迎える。3五の歩を取るか、2五の桂を取るか・・・

▲3五歩に対し先ずは△2五桂と桂を取る手から見ていく。これに対し先手は▲3四歩と取り込むのが正解。

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正解はこの▲3四歩。少しでも有効な手を求める。

この▲3四歩で平凡に▲2五同歩と取り返すのは△3五銀▲同銀△同歩(図略)とされ、先手のほうが苦労する展開かもしれない。

後手はまたしても分岐点を迎える。先手の攻めに対する後手の受け。看破されては新たに繰り出される先手の手に対応しなければならないという意味では後手のほうが大変なのは言うまでもない。ただ、最後まで知らなければ切れてしまうという意味では先手のリスクも同様ではあるのだが。▲3四歩に対して考えられるのは△3七歩と飛頭を叩く手、△3六歩と垂らす手、そして△3三歩と自陣の嫌味を消しにかかる手か。まず、△3六歩と垂らすのは▲2五歩△同銀▲5五歩△8六歩▲同歩△8七歩▲9六歩(65手目図)と進んだ実戦例がある。

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これは互角だろうか。

△8七歩はなんとも嫌味な歩だが、8八玉の形で叩かれる場合と違って最初から玉が9九に落ちている場合は元々8八が厚いこともあり、気分的にもそれほど苦にならない(、というのは私だけかもしれないが)のが不思議であり、ということはこの形(8八玉-9八香)であれば△8七歩の叩きには▲9九玉と落ちるのが最善というケースも少なくないのかもしれない。実際、9六歩と突いて△9五桂の筋を予め受けた65手目図は先手も十分戦える局面と思える。

△3六歩では緩いだろうか。では△3七歩(図)と直接飛頭を叩くのはどうか。

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桂が生きているうちに飛をおさえる。飛はどこに逃げるか。

飛を捨てての攻め合いも考えられなくはなさそうだが、後手陣も固くさすがに無理だろう。▲3九飛と引いて後の▲3七飛を狙う手も見えるが、後手の角の睨みもなかなかのもので、2五の桂が消えても飛の活用は難しいようだ。そこで飛は横に逃げることになるが、1筋のプレッシャーを避けて▲5八飛を選択すれば△1七桂成▲同香△1六歩▲同香△同香▲1四歩(下図)という感じだろうか。

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▲5八飛の変化。△6九銀の傷があるがこれはこれで先手悪くはない。

△3七歩に次の▲2五歩をより強くするために▲2八飛とかわす手ももちろん考えられる。▲2八飛以下△1七桂成▲同香△1六歩▲同香△同香▲2五歩△1七香成▲2六飛△1五銀▲3六飛(下図)と進めばやや先手もちか。

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忙しい気がしないでもないが、やや先手持ちだろうか・・・

尚、手順中△1七香成のところ単に△1五銀と出るのは▲1四歩△1七香成▲5八飛(図)が一例で、これは65手目図とほぼ同じだ。

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1四歩の存在が大きい。

57手目▲3四歩に対する△3六歩と△3七歩を見てきたが、僅かながら先手戦える展開となった。では、▲3四歩に対し△3三歩(58手目図)とこちらを受けるのはどうか。

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根元を消しにかかる。

第三の手段、拠点を消しにかかる△3三歩はどうか。これに対し▲3三同歩成△同銀上▲1四歩△同香▲2五歩△同銀▲5五歩△同歩▲5八飛(下図)とした実践例もあるようだが、いまひとつ狙いのはっきりしない展開であるようだ。

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一実戦例。試行錯誤の上で定跡は完成されていく。

戻って△3三歩に対しては▲2五歩△同銀▲1三歩△同香▲3五銀(63手目図)が現在の結論か。

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現在の定跡。△3四歩には▲1七桂が調子よい。

3三に歩には触らず▲3五銀まで進める。対して△3四歩なら▲1七桂が調子よい。以下△3五歩には▲2五桂で先の▲1三歩までが生きてくる。また、▲3五銀に対し△2一桂と打った実戦もあるようだ。しかし以下▲8八銀△3四歩▲1七桂△1六銀▲3四銀△同金▲同飛△3三銀▲3八飛△3四歩▲5五歩(下図)と進んで先手が指せる将棋となった。

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実戦例より。やはり△3四歩には▲1七桂がぴったり。先手指せる。

上図以下、△5五同歩なら▲5四歩。△5五同角なら▲4六角や▲3五歩があって攻めが切れない。

63手目図▲3五銀の局面に戻り、後手は▲1七桂を消すべく△1六歩と突くくらいだろうか。次に△3四歩とされると今度こそ受け切られてしまう。そこで先手は▲2六桂(65手目図)と打ち、攻めの継続を図る。

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△1六歩にも用意の一手、▲2六桂。

▲2六桂は、次に▲3三歩成△同銀▲1四歩を狙っている。▲2六桂に対して△2六同銀と取るのは▲3三歩成△同銀としてから▲2六銀(下図)で先手よし。

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△2六同銀は先手よし。

△2六同銀と取るのは先手よし。図まで進んで次の▲2五銀から▲1四歩の狙いが厳しい。後手は受けが難しい。▲2六桂に対し△1五香と更に浮くのはどうか。以下▲8八銀△1七歩成▲3三歩成△同銀▲3四歩△4二銀▲7七角(73手目図)となるとこれも先手よし。

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絶好の位置への角の転換。先手よし。

△1五香は▲1四歩をかわしたものだが、73手目図まで進んで難しいとは思うものの、やはり先手よしだろう。穴熊への組替は▲8八銀からの角の転換という筋も可能にしてなかなかである。

今回は▲3五歩に対し後手が△2五桂と取る変化を見てきたが、いずれも先手に分のある展開であったように思う。では、平凡に△3五同歩(図)と応じるのはどうか。

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平凡に応じる。

平凡かつ素直なようだが、これが最先端。次回はこの△3五同歩以下の順を見ていく。

 

(参考文献;将棋世界誌2011年2月号)


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